すっかり廃れてしまった教会に入るとそこには黄色と白の花が咲き乱れている。
星の声が聞こえる、不思議な場所。エアリスはここが好きだった。
久しぶりに足を踏み入れ、喜んでいるような声に耳を傾けると彼女の存在を知らせてくれた。
陽の眩しさに目を細めながら上を見上げると梁の上からぷらぷらと小さな足が揺れていた。
やっぱりここにいたと小さく溜息をつき、心の中で彼女の存在を知らせてくれた星に礼を言う。


、そんなところにいたら危ないよ。」


足場の悪い階段を上り、不安定で細い梁の上をそっと歩いていくと小さな背中が見えてくる。
声を掛けると少女は振り向きエアリスに対してにこりと微笑んだ。
ふわりと銀色の髪が風に揺らされる。


「なに、してたの?」


そっと彼女の横に腰掛けエアリスは聞く。


「空をみてたの」
「空?」
「うん。空。」


は座ったまま伸びをすると上を見上げて大きく空を仰いだ。
どこまでも続く雲ひとつないその空はまるでキャンバスに描かれた絵のようで。


「空は…すき。
 青だけじゃない、いろんな色があってすがたがあって。
 わたしの気持ちの違いでも空の表情ってかわる。」


たとえば今自分が悲しみに沈んでいるとしたら美しいこの空の青はとても憎たらしい青色になるだろう。
普段見ると憂鬱になりそうな曇り空は、笑っているときに見上げたら一緒に笑っているように見える。
その変化を感じ取るのがは好きだった。
だからこうして毎日空を見上げている。――今日は、幸せの蒼。


「いろんな色があるけど、わたしは蒼が一番すき。」


あの空の色は自分の色だと、彼が教えてくれた。
あのどこまでも続く晴天の空はの瞳と同じだと。


「…そっか」




「私も蒼が一番好き、かな」


明日は晴れるだろうか。
晴れなかったとしてもきっと彼女には幸せの色になるだろう。

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