太陽が西の空に沈みかけ青い空が紫色に染まる頃、うっすらと姿を現した月の横に一番星を見つけた。
今はまだ頼りない光だが夜の世界ではきっと力強く輝くのだろう。
たまたま見つけた一番星。なんだか願いがかなうような気分になって、そっと手を組んで祈りを捧げた。
「神様って、かなしくないのかな?」
友人二人との食事を終えた帰り道でがぽつりとつぶやいた。
見上げている空は満天の星空が広がっている。だいぶ暑くなってきたとはいえ、夜だとまだ少し肌寒い。
「…悲しい?」
少し前を歩くの手をそっと握り、セフィロスは問い返す。繋いだ手はの方がずっと暖かかった。
はちいさく頷くと歩幅を狭めてセフィロスの横に立つと真剣に離し始めた。
「そう。だって、神様っていつもわたしたちの都合のいいときに”お願いします”ってお願いされて、その願いがかなわなかったら”もう神様なんて信じない”とか思われちゃったりするんだよ。そんなの、本当に神様がいたら可哀想だし、かなしくないのかなって」
まくし立てるように一気に話すとは空を仰いだ。
「そもそも神がいるかどうかが疑問だな」
「ん〜やっぱり?でも、セフィロスも神様にお祈りとかお願いごととかしたことあるでしょ?
「どうだったかな」
おどけた口調で返すと、うそばっかりとは頬を膨らませた。
ない、といえば嘘になるだろう。だが本当に神がいたとして彼女を守ってほしいと願えば叶えてくれるわけでもない。
神とは都合のいい願掛けにすぎず何かを守りたいならば自分で動くことが一番であり、動くしかないともいえる。
「お願いごとっていえばザックスがね、これにお願いごとかいて木につけると叶うかもしれないんだって〜」
どこから取り出したのか、の手には本の栞のような長方形の紙が握られていた。
「あぁ…七夕か」
「たなばた?」
「東の方の国の風習でな。その紙…短冊に願い事を書いて笹にくくり付けて海に流すものらしい。…まぁ、俺も詳しくは知らないが」
ふぅん、とは短冊をじっとみつめたあと鞄にしまった。
何を書くんだ、と聞けばおいしいお菓子が食べたいと返ってくる。
らしい返答にセフィロスは笑うが、思い描いた答えとは違っていて苛立ちや落胆に似たなんともいえない感情が一気にセフィロスを支配した。
「ずっと一緒にいたいっていうのはかかないよ」
緩い風が吹いて二人の同じ銀色の髪がなびいた。
セフィロスはその言葉を聴くと目を伏せ黙って次の言葉を待つ。
「ほんとうに叶えたい願いごとは、自分でかなえなくちゃね」
繋いだ手が強く握られ、セフィロスを見やると目を細めて綺麗に笑っていた。
それは同意を得られた証拠で彼もそう思っているということだ。
は満足そうに笑うと思い出したように付け加える。
「ザックスがみんなでパーティーしようって。ケーキ食べて、プレゼントあげるんでしょ?」
「…それは誕生日だ。ザックスの言う冗談を真に受けるな」
「えぇ!プレゼント、ないの!?」
「ない。あったとしてもお前にはやらん」
セフィロスのいじわる!
は手を離すと走り出す。セフィロスは笑ってゆっくりとの後を追った。
いつまでもこんな些細な幸せが続けばいいと思う。
神にでもなく、星にでもなく。セフィロスは目を閉じて自分自身に誓った。
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無理やり七夕記念。